甘さと痛み

舌先の甘さと不釣り合いな、胸の痛みであった。
姉の結婚式でプチギフトとして配られた薄桃色のセロハンの袋には、可愛らしい色とりどりドラジェが包まれていた。式場を後にしながら、袋を開けて一つ口に含んでみる。わたしの好きな優しい甘さが広がり、自然と顔がほころぶのが分かった。
顔をほころばせながら、自分が涙を流していることには、暫く気が付かなかった。ドレスを着た姉は、あまりにも美しかった。波打つ栗色の髪は、白いレースに良く映えていた。わたしの大好きな姉さん。何もかもが完璧だった。隣に立つ新郎さえも。
「明人さん…」
姉の結婚相手に恋しているなど、どうして伝えることができるだろう。姉はいつも、彼女の全てでわたしを愛し、守ってくれたというのに。
「由紀子ちゃん、これ大好きだものね。」
そう言って、皆に配るギフトに妹の好物を選んでくれる姉だった。もう一つ口に含む。おいしい。わたしがドラジェを好むのは、この優しい甘さが姉に重なるからなのだ。ころころと丸い形、舌先に載せた途端じんわり伝わる控えめな砂糖の甘さ。
「姉さん、姉さん…明人さん…」
ドラジェは、食べても食べてもなかなかなくならなかった。いつもはそんなこと思わない癖に、もっと甘ければよかったと、じっとりとそう思った。自分にこれほど煮えきらない感情があるだなんて、誰にも知られることなく過ぎるのだろう。
姉さん。優しい、優しい姉さん。わたしに甘さとひそやかな痛みをありがとう。どうかどうか、幸せになってください。